昨年の秋から、月1回のペースで連続しつつ読み切りのトーク&レクチャーシリーズを展開してきた。とりあえず「拡張計画」と呼んできたが、いつまでも計画というのもおかしいので、今回から「月イチ・セッション」と、これまたとりあえず呼んでみることにする。

そのシリーズに杉田敦「ナノ・スクール」というのがある。スクールの規模もさることながら、扱うコンテンツを限りなく切り刻んで極小に挑むスクールナノだ。

杉田敦のこの試み、モダンに刷り込まれてしまった良心にも切り込んでくるものだから、投げかけられる、わかっているつもりの極小の課題を考えれば考えるほど参加者はどんどん混乱していく。

blanClassがある井土ケ谷は「井土ケ谷事件」という歴史的な事件があった場所。たとえばその事件を自分たちのからだをつかって寸劇してみると、わかった気になっていた、あの頭の中の出来事が嘘のように崩落して、その「やってみた」おかしな体験が、不思議と意味を持ってくる。(そういうことを成果としていくスクールなのだが…)。

経験を優位に語る知と、情報をこそツールに考えを巡らせてきた知が、真っ向から対立してきたかに見えていた昨今だが、経験優位者は経験できないことにはめっぽう弱いし、情報優位者はいつかエスカレートして現実から逃避していく。杉田が提案しているように、経験していないことをいかにして考えるか、いわば、「経験と情報の間」にこそ考えを巡らせるフィールドが広がっているのかもしれない。

blanClassでは毎週毎週、必ずと言って良いほど面白いことが起こっている。ないないづくしと、いくらかの約束事をたよりに、アーティストたちが勇猛果敢に工夫しながら、このトライアル&エラー(試行錯誤)を楽しんでいるからだ。それは文字通りの実験になっている。実験とは? 化学の実験室でボコボコいわせながら、課題をひとつひとつクリアーしながら、データを積み重ねていく、あの実験のことだ。今年のヴェネツィア・ビエンナーレに田中功起はblanClassで試みた3つの「不安定なタスク」の記録も持っていった。そこで受賞した特別賞の受賞理由が「恊働の試みとその失敗」というものだったのだが、本当に共有する必要があって、何よりも重要な成果は、実験によって得られた「失敗(エラー)」の数々であるのは言うまでもないことなのかもしれない。

9月10月は、最若手のアーティストを何組かお呼びしているが、10月の最後の土曜日には、もはや知らないことなんてないように見える、あの岡﨑乾二郎が「とるものもとりあえず」 blanClassに緊急参戦してくれる。きっとほかではない岡﨑さんならではのアクロバティックな試行が展開されるに違いない。

 

小林 晴夫


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