art & river bank 「depositors meeting #11」に、今年もポートフォリオを出展する。これが5回目、またまた1年が経った。今年はセレクターとして棚がもらえたので、blanClass friendsから何組かのファイルが一緒に並ぶ予定。セレクターというのがなんなのか、よくわかっていなかったので、今年blanClassに出演したアーティストみんなに声をかければよかったと、ちょっと後悔しているところ。
 
 今年のお正月はThe Academy of Alter-Globalization(秋山友佳、原田晋、増本泰斗)+森田浩彰企画による「新年プレゼン大会」だった。きっかけは「MOT ANNUAL 2012|風が吹けば桶屋が儲かる」の勝手に関連企画の一環として、森田浩彰に「新年パーティーを企画してほしい」と依頼したところ(ちなみに前年のクリスマスパーティーは山城大督にお願いした)、森田が逆に投げかけてきたのが、これまでのblanClassのディレクションではできなかったことの提案だった。簡単に言うと「blanClassでのパフォーマンスやワークショップのプランを公募して、応募者によるプレゼンテーション大会」ということなのだが、森田はさらに共同の企画運営をAAGに依頼、「re:plan (素人のように考え、玄人として実行する?)」というコンセプトをサブタイトルに据え、来場したお客さんと一緒にゆるやかに話し合いながら実行するプランを選出していった。
 ともするとマンネリ化してしまう日々の運営やディレクションを「どうやったら理想的に展開していくべきか?」悶々と悩んでいた私は、この企画からずいぶんと刺激を受けた。ディレクターやスタッフで完結したシステムをつくるのではなく、裏方部分も含めて風通しを良くしておけば、自ずと相応しい方向に向かっていくかもしれない。もちろんそこには信頼に根ざした丁寧な関係をもつくっていかなければいけないだろうが。
 2月と3月に、2日または3日連続の企画を、武久絵里・馬君馳、岡田貞子、渡邊トシフミ、A子(松本真幸)、O,1、2人(外島貴幸+吉田正幸)5組のアーティストたちにお願いした。それまで「お約束」の1つでもあった「ワンナイトで完結」だが、例外的に複数の日程でやった企画もあり、意図的にそちらに仕向けたら、これまでにない企画が生まれないか試しにやってみたもの。結果出てきたものは、before & after的な発想と、丸2日寝ないでぶっ続け的な参加型のもの。まだまだ試したらいろんなアイデアが出てくるだろうから、これはまたいずれやってみようと思っている。
 4月は港が一番いい季節にBankART MINIに2週間の出張blanClass。たまる一方のアーカイブをなんらかの方法でアウトプットしなければ! というのが、これからの大きな課題。その試み第1弾が『対談集 写真か?|鷹野隆大+秦雅則』、DVD「西浦の田楽|多田正美 w/鈴木理策」(DVDはトラブルがあり、リリースを延期、年内にリリースすべく現在もなお準備中)の発行。それらを記念して行ったのが「blanClass Anthology #1」の完全出張。期間中、鷹野隆大+秦雅則2人展を開催。土曜のLive Artは、鷹野隆大+秦雅則トークイベント、多田正美、中川敏光のパフォーマンスイベント。昨年末からはじめた拡張計画もすべて出張します。杉田敦[ナノスクール #6]、CAMP[translations #5]、眞島竜男[DSN #4]、BC写真大学修了展、BC写真大学講評会、というわけで、出張全体がアンソロジーだった。
 6月7月は「参院選ビフォアー&アフター2013」。2ヶ月分の全企画のテーマを「参院選/選挙/投票」の1つに統一したことも、それもポリティカルに攻めてみたのも初めてだった。
 きっかけは2つあって、1つは昨年末の衆議院総選挙の圧倒的な結果と、そればかりかその結果が投票に行く前から、分かってしまっていたことへの落胆。もう1つは、投票日の朝、眞島竜男さんから開票にあわせて「踊ります」から、場所を使わせてほしいと依頼があり、眞島さん宛に投票がらみのTwitterの数×1分間の踊り、計101分の踊り終えた満身創痍の眞島さんはそのまま泊まり、翌日から参院選までの間、毎日2分間の「今日の踊り」(YouTube)が展開したのだが、そのアーティストの壮絶(と言いたい)な生き様にただただ感動して、その一挙上映会と公開「踊ります 2013年参議院選挙」をやりたいと思ったこと。どうせなら2ヶ月かすべてを「参院選」に向けてやってしまおうというのが事の次第。
 唯一アフター担当だった良知暁が「選挙」を問題にしたアートイベントはありそうであまりないから、続けてやった方がいいと言っていたが、いつも個人的に選挙に行くだけで、いろいろと作戦立てたり、考えたり、話し合ったことって、これまでなかったな、と確かに思い、個人的にもかなり希有な2ヶ月間になった。政治だって、経済だって、科学だって、芸術だって、手元に引きずりこんで、「ウンウン」考えた方が良いに決まっているから、これもそのうちやることにするか。
 今年はもう1つ、2月に森美術館に、CAMPやAITとともに呼ばれて、昨今「Discursive」に展開しているアーティスト・イニシアティブについての企画を「六本木クロッシング」でやりたい、ついては相談に乗ってくれないかというような依頼を受けた。考えてみると森美術館と本番も含めて話し合いや準備をほぼ1年間していたことになる。
 展覧会のタイトルは森美術館10周年記念展「六本木クロッシング2013|アウト・オブ・ダウト」展、関連企画は「ディスカーシブ・プラットホーム」に、blanClassは2回森美術館に出張することになった。そこでなにをしようとして、結果なにが起こったかを振り返って考えてみると、まずはblanClassが創立当初から継続的に行われてきたイベントから選ぶことと、blanClassが企画する以上は「ディスカーシブ」というよりも、すべてにおいて「パフォーマティブ」になってしまうということだった。
 そこで1つ目のイベントには2007年の「六本木クロッシング」にも参加していた眞島竜男をお願いした。というのも「クロッシング」で眞島が試そうとしていたことが、blanClassで行われた眞島の一連のパフォーマンスで、ある意味開陳したように感じていたからだ。特に3.11以降にblanClassで発表された眞島作品は目を見張るものがある。美術という日本の文化圏特有のフィールドを思考の拠点に、現状の社会をその都度翻訳するような姿勢は類を見ない。blanClassのなかでも斗出して成熟しているように感じる。その眞島作品を一挙再演という形で、美術館や展覧会という制度に戻していく作業は批判的な意味においても意味があることに思えた。
 もう1つは成熟とは真逆のもっともナイーブな表現、この先どうなっていくか未知の、だからこそ未来の予感に満ちた若いアーティストたちのパフォーマンス・マラソンだ。これまでに行った、ステューデントナイト(vol.1〜vol.9)とヤンゲスト・アーティスト・マラソンに参加したアーティストを呼ぶことにした。ところがその数約80組。12時間開館している森美術館とはいえ1日ではさすがに収まらない。選抜するしかないのだが、その方法には正直悩んだ。そこで、1月に行ったAAG+森田浩彰「新年プレゼン大会」とちょうど企画中だった「参院選ビフォアー&アフター2013」で考えていたことを実践してみることだった。まず試してみたかったのが、web投票。投票や投票誘導活動に関して、ほぼルールを定めず、どんなことでもありの「選挙みたいな」ことを通して、世間で起こっている「選挙」、「オリンピック誘致」、「日展のこと」、どうせなら「AKB」なんかも含めて、そこで人はどうやって選んで、どうやって選ばれるのかを考えてみてほしかった。だからそこには不正は準備されておらず、すべてが公正な表現と見なされる仕掛けだ。少なくともそういった意味のミッションをエントリーをお願いした作家たちには送ったつもりだった。結果的に物議をかもした最終プレゼン大会にもさらに上乗せした「パフォーマンス」が隠されていて、審査員としてジャッジに参加したAAG、森田浩彰等は、WEB投票から本番のラウンドテーブルの設計から運営まで協働で立ち会ってくれた。そうやって積み重なれたそれぞれの思惑が本番の「from studen night」では、見事に多層に1つの場にレイヤーをつくって、あるいはノイズになって共存していた。
 もともとその場は森美術館であり、六本木クロッシングであり、アウト・オブ・ダウトであり、片岡真美であり、プロジェクト福島である層の上の中崎透の風呂敷上にある。さらに乗っかったblanClassの下請けの層に孫請けのAAGと森田の層があって、ひ孫請けのステューデンツな層が重なったわけだから、時間も長いし、疲れもあって、朦朧とする中に、ハラハラドキドキ騒がしくって、それでいてとても静かな居心地の良い場が、一瞬ではあるが立ち現れ、いろいろの意味や価値が対立しつつ、批判しつつ、でもきっと共存できたのではないだろうか?(それってちょっとプレジェクト福島っぽいけど)
 どこに行っても、blanClassは本質的には無色透明の自由な場をデザインできるよ。と言いたかったわけだが、本当にできたかどうかは、相当私も当事者だから、わからないのが正直なところ。ラウンドテーブルでは、器としてあった制度と、何段階かにステップしてきたそれぞれのアプローチを中心に話が進んだが、本番が一番世間に近いところだから、そうやって曝されると、もっと複雑に入り交じったコードで、またぞろ誰かに選ばれたり、選ばれなかったりしていくわけだけど、今回の企画で選ばれた人も選ばれなかった人も、そもそもエントリーしなかった人たちでさえ、本人がその気になれば、実は同じような位置で考えを巡らせることができたはず。その証拠に森美の運営側で全面協力してくれたエデュケーターの白木栄世さん、アシスタント・キュレーターの水田紗弥子さんが私の目からは一番楽しんでいるようにみえた。(気のせいかもしれないけど)
 それでも結局は個別にあった内容が重要のはず。少なくとも私は、私の役割にてんてこ舞いになりながらも、結構丁寧につきあったつもりだ。それはblanClassでささやかにやっているときもまったく同じだ。今年はほかに画家をたくさん呼ぼうと思いつつ、荻野僚介、佐々木健の絵画にまつわるイベントのみになってしまった。また中村達哉ダンスワークショップや池宮中夫ソロダンスと、ダンスのイベントもやっている。来年は音楽にも手を伸ばしたいと思っているのだが、アートの中身を問う際の主題のあり方と形式のズレ、観客が混ざってくれないなどの難しい問題も多々あるものの、眞島竜男の「今日の踊り」ではないが、人が原初的に抱えている「踊る」とか「唄う」とか「描く」みたいなことがなんなのかも、どんどん考えていきたいと思う今日この頃…。

 

小林晴夫(blanClassディレクター・アーティスト)


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