フリーマーケット|cat’s heaven…![新年ヤミ市]
2019年のLive Artも昨年に引き続き、キャッツヘブン企画の「ヤミ市」でスタートします。人々が何かの価値を交換しあうことを禁じられた時代、それでも人々は広場に集まり、交換しあうことで生き残った。我々も先人に倣って、ショバ代を払いゴザを広げ、定価も相場もない商売をはじめてみよう。交換と繋がり、統制と生活、自由と混沌。もしかしたら、あの頃の広場の熱に我々も出会えるかもしれません。
出店:飯島剛哉/うらあやか/大槻英世/齊藤哲也/出張新宿マルシェ/関 智文/関 真奈美/高山玲子/野本直輝/古市久美子+チビ画伯たち/眞島竜男/宮澤 響/メランカオリ/村田紗樹/山本聡志/吉田裕亮/渡辺志桜里/泥沼コミュニティ/blanClass ほか/企画:吉田和貴
日程:2019年1月13日(日)
初売りスタート:13:00
入場無料
「本当に、旨そうに見えたんだよな」
人々が何かの価値を交換しあうことを禁じられた時代、それでも人々は広場に集まり、交換しあうことで生き残った。我々も先人に倣って、ショバ代を払いゴザを広げ、定価も相場もない商売をはじめてみよう。
交換と繋がり、統制と生活、自由と混沌。
もしかしたら、あの頃の広場の熱に我々も出会えるかもしれない。
その日の夕食は、我が家のメニューでは珍しい「すいとん」だった。鶏肉に人参、大根とほうれん草の入った別に何というわけでもないすいとんで、ハンバーグやスパゲティーが好きな私には、どちらかというと物足りない夕食だった。早飯が身上のじいちゃんは、早々に食べ終わるとお茶を飲みながら独り言のように話し始めた。
じいちゃんは、兵隊に採られて満州にわたり、コレラ船で終戦から半年以上たって変わり果てた日本に帰ってきた。そして、帰ったその日には畑で大根を抜き、兵隊から百姓に戻った。世間ではあらゆる物が足りなくて、抜いた大根は面白いように売れ、中野と築地をリアカーで往復する日々が続いた。そろそろ聞いているこちらが不安になってきた頃、やっと話が繋がる。すいとんの話だ。
「市場の帰り道、新橋の駅があったあたり、汚いシーツみたいな布に消し炭で「肉入りすいとん」て書いた看板がでてて、まだ寒いころだから、鍋からモウモウと湯気が立ってて、その周りで何人かが立ったり座ったりしながら、すいとんを黙々とすすってるんだけど、その器からもモウモウと湯気が立ってて、器が空くの待ってる順番待ちの鼻息も湯気みたいで、もちろん、具なんかほとんど入ってないし、すいとんも今日食べた奴みたいに固くなくて、ふわふわの有るんだか無いんだか分からないみたいのが浮いてるだけで、たまに肉らしき欠片があるんだけど、それが何の肉だか分からない味で、でも、本当に旨そうに見えたんだよな。」
私はそのすいとんの味が気になって、美味しかったの?と尋ねたが
「戦争してるときは負けたら国が無くなるって思ってて、負けて帰ってきたときは本当に国がないようなもんだったけど、国が無くなっても大根は売れるし、すいとん売る奴もいれば食べる奴もいて、あれはあれで面白かったな。」
cat’s heaven…!
2005年に第二次世界大戦終結の日という特定の日を念頭においたグループ展のために生まれたプロジェクト。戦争との関連で語られるその日を前に、ストレートに戦争や戦後を問う展示も重要に違いありませんが、確実に日常の生活の中から消え去っていくその記憶や、それに対する問題意識を、露悪的かつ正直に吐露することも重要なのかもしれません。犬死について考える(thinking about dog’s death)のではなく、猫たちの幸福(cat’s heaven)を想うこと。充満する幸福の香りは、密かに踏みにじっているもののむせ返るような異臭を含んでもなお、甘美なままいることができるのでしょうか?