展覧会&パフォーマンス | 佐々 瞬[彼らとの対話(仮)]
私はこれまで関係なかったはずの出来事や人達にいかに出会うか、ということに関心を抱いてきた。知識を得ることや、ただ知らない世界を覗き見することではなく、関係がないものと関係を結ぶこと。これは案外コツがいるもので、「関係がないもの」は、そう判断した時点で関係が生まれてしまう。だからこちら側が選ぶものでもないし、ただ門を開いて待っていればいいワケでもない…という代物。だが求めいれば手に入ることもあるようで、道端で拾った手帳の持ち主と出会う機会に恵まれた。この人物がなかなかの変人で、会えば会う程にその不思議な人柄に惹かれ、ついには私の自宅にまで招くようになった。どうやら満州の引揚者であるこの人物は、自ら経験、私の知らない世界のことを色々と教えてくれた。話の内容が興味深いのはもちろんだが、聞いているこちらを夢中にさせる話術を持っている。決して陽気な人物ではないが目にはどこか好奇心に満ちた光を湛え、何度も我が家に通ってくるあたりから、人なつっこさを持った人柄であることが伺える。一度くらいは私も相手の家へと招かれたい、などと変な欲が出てきた頃、彼は突拍子もないことを切り出してきた。自分はお前の、つまりの私の、祖父だというのだ。
展覧会:2014年3月3日(月)ー3月15日(土)(日休)13:00-20:00(最終日〜19:00)
公開放送室
3月8日(土)20:00
トーク[これからのこと/大きな目的]
3月13日(木)20:00
パネラー:佐々 瞬(アーティスト)/百瀬 文(アーティスト)/庄司尚子(横浜美術館展覧会コーディネーター)/小林晴夫
パフォーマンス[いつか記憶を失った、私のための台本をつくる]
3月15日(土)19:30
入場料:1,000円(何度でも再入場可)
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佐々瞬 [彼らとの対話(仮)]展示を開催中。会期は3月3日(月)ー3月15日(土)の2週間。(日曜休み)ずいぶん前に亡くなった母方のお祖父さんへの興味に始まった今回のプロジェクトだったが、お祖父さんを一番知るお祖母さんの具合が急に悪くなり、もはや何も聞けなくなったときに、その興味の先は、いつのまにかお祖母さんに変わっていた。そのお祖母さんが、搬入日の早朝、息を引き取り、またしても不在が立ちはだかり、佐々自身の興味のありかさえ不明瞭になった。そうした不可抗力もあり、3月3日展覧会初日より、大きくまたは少しだけ、しかし毎日変化し続けている佐々展だが、終盤に向けてそろそろ最終形に収まってきたようだ。
最終日に行うパフォーマンスでは、今回の展示で、結果的に問題にしたことから展開して、今から30年間の未来の経験、記憶を既知のものとしつつ、しかし忘却している状態をパフォーマンスする。失った未来の記憶をたぐり寄せなければならないのは、来場するあなたのようです。
3月13日(木)20:00~ 佐々瞬展/関連企画として、トークを行います。ゲストは現在、横浜美術館アートギャラリーで展覧会中の百瀬文さん、横浜美術館展覧会コーディネーターの庄司尚子さんです。佐々瞬、小林晴夫も交えて4人で「これからのこと/大きな目的」についてお話しします。もちろん公開で行いますので、少し早めに来て展覧会も見てご参加ください。(残念ながらその日は横浜美術館は休館日なので、百瀬文展とあわせてみたいという方は前日か後日に…)
佐々 瞬 Shun SASA
1986年生まれ。東京で活動中。2009 東京造形大学美術学科絵画専攻卒業。インスタレーション、パフォーマンス作品を制作。主な参加展覧会に「No Man’s Land」(在日フランス大使館、東京、2009年)、「大邱フォトビエンナーレ2012 Dance on a Thin Line」(大邱芸術発展所、韓国、2012年)、「MOTアニュアル2012 Making Situations,Editing Landscapes 風が吹けば桶屋が儲かる」(東京都現代美術館、2012年)、「Omnilogue:Your Voice is Mine」(シンガポール国立大学美術館、2013年)、2013年「催眠術/話の行方」(HIGURE 17-15 cas)など、パフォーマンス作品に、2012年「それらの日々をへてあの日がやってくる」(blanclass・横浜)などがある。