Event

中村達哉

かかわりをおどる

2013.11.03—2014.01.26

中村達哉ダンス・ワークショップ
[かかわりをおどる]3 month ワークショップ

2013年11月〜2014年1月・日曜日+祝日・全15回

難しいテクニックは必要ありません。楽しみながら、より自由な視点から“かかわりの方法”を編み出していきましょう。 なにげない日常のなかから、動くための状況を見つけ出し、深めていくためのダンス・ワークショップ。 表現に必要な身体づくりから始めて、創作~発表までのプロセスを、3ヶ月の期間を使って丁寧に行っていきます。

かかわりを踊る|中村 達哉
踊ることは、プライヴェートな欲求に基づくものでありながら、同時に他者に開かれた社会的なできごとでもあります。  今回は、「自分と身体」「自己と他者」「私たちと、私たちのまわりにあるもの」、それぞれのあいだにあるものを見つめ、丁寧に拾い上げ、ルールを共有しながら様々なシチュエーションを遊んでいきます。3ヶ月というまとまった期間を通して、“この場でしか起こらないダンス”を作ることができればと考えています。

○からだをつくる
“曲げる”“伸ばす”“ねじる”など、背骨の流れを意識したボディワークを実践します。呼吸と合わせて、無理なく関節の可動域を広げていきます。どんな動きにも対応できるような、体の中心から動く感覚を身につけましょう。

○シーンをつくる
モチーフを共有してみんなで動きをつくったり、他者とのかかわりから生まれる動きを探ることで、身体の意外な表情を発見していきます。さらに、それが「見える動き」であるためには何が必要かを考えていきます。またスタジオ周辺の街を散策し、映像や写真、文字などの記録メディアを用いて「場所とのかかわり」を作っていきます。

○発表する
創作の過程で出てきたモチーフを小さなシーンに発展させて、発表してみましょう。 振付の提示やサイトスペシフィックなもの、映像や写真をドキュメントとして発表するなど、表現の形式は自由です。ダンスを見せるための方法について、皆さんそれぞれのアプローチができればと考えています。(発表は、blanclassにて毎週土曜日に行われているLive Artの枠で行います。詳細は11月頃に決定。)

日程:11月3日(日)、4日(月)、10(日)、17日(日)、24日(日)
12月1日(日)、8日(日)、15日(日)、22日(日)、23日(月)
1月12日(日)、13日(月)、19日(日)、26日(日) 
2月1日(土)発表

(12月29日、1月5日はお休み、2月1日は発表)

場所:blanClass
時間:毎週日曜日・祝日 13:00-16:00
定員:20名


参加者募集!!

場所:blanClass
時間:毎週日曜日・祝日 13:00-16:00
定員:20名応募者数が多い場合は2部制にします。(2部:18:00-21:00)
申込金:7,000円
受講料:38,000円(別途資料代など実費がかかる場合があります)
参加資格:身体を使って表現する事に興味がある方(ダンス経験は問いません)。
申込み方法 講座の要項を了承の上、応募用紙をダウンロード、必要事項を記入の上 info@blanclass.com まで送信し、指定の銀行口座宛に、全額か申込金のみを振込んでください。入金が確認でき次第、手続き完了となります。(申込金のみを選択した方の場合、講座1回目までには授業料をお支払いください。PDF版の場合は郵送でも受け付けます。)

申込書ダウンロード(PDF版)
申込書ダウンロード(Word版)

銀行口座 三井住友銀行 横浜駅前支店 (普通)8895910 blanClass(ご自分のお名前を忘れずに入れてください)
問合せ・申込先:blanClass 〒232-0006 横浜市南区南太田4-12-16-2F E mail info@blanclass.com


中村 達哉 Tatsuya NAKAMURA(ダンサー)
1998年より現在まで、ダンスカンパニー「イデビアン・クルー」に参加。パフォーマンスシアター「水と油」の作品や、山下残の作品などに出演。またミュージシャンのPV出演や、美術家とのコラボレーションも多数行っている。2010年、2011年STスポット主催「ヨコラボ」集団創作コースリーダー/オブザーバーを担当。2013年自作のソロ作品として「そこから眺める」を発表。

中村達哉とblanClassについて
blanClassは毎週土曜日にワンナイトイベント+公開インタビュー「Live Art」に加え、平日の夜に眞島竜男、杉田敦、CAMPによる、トークやレクチャーのシリーズ「月イチ・セッション」を展開中。SNSなどを積極的に活用しながらその場で起こる作品未満の行為、発言、発信をオルタナティブに摸索している。 blanClassでの中村達哉は2010年以来、5回の出演のうち4回はダンサー、美術家、映像作家など、いろいろな形式のアーティストとのコラボレーションだった。blanClassに限らず、BankARTのレジデンス・アーティストとしても、それまでに獲得してきた自らの身体言語を維持しつつ、ダンスとは異なる言語で思考するさまざまアーティストとの対話を積み重ね、1つ1つの場を共有しながら、道場破りのようにコラボレーションを決行してきた。 そればかりか普段から、からだごと目のようになって、いろいろに仕掛けられた表現を、あるいは目の当たりにする風景を、ほどくように吸収してきた。そうやって何年か越しに課してきた、静かなトレーニングの成果は今年の2月にSTスポットで発表されたソロワーク「そこから眺める」に結集されている。 今回のblanClassでのワークショップは、中村達哉がさまざまなアーティストとの交流から発見した「見るものの脳に直接働きかける」特異な技と、からだを使って考えてきた経験とを最大限活かして、頭とからだを柔らかくして“かかわりの方法”を探っていく冒険です。


ワークショップレポート

2013年11月3日(日)13:00 – 16:00
1日目 振付をおどる

1「オリエンテーション」 
あらかじめ作品という枠にはめるよりも、プロセスをそのまま提示するような発表形式は可能か?体験や情報を共有して、それぞれのアウトプットの形を持ってもらう。  

2「動きの要素出し」 
単純なステップやフロアの動きを展開する。

3「すれ違う1」
ペアを作り向かい合って歩く→すれ違うの繰り返し。相手との”接点”を作り出す。
①自分自身の身体に起こる変化を味わう。
②相手とどのように間合いを取るか。
③空間全体を俯瞰して見たときの視野の取り方、リズムの付け方を考える。
「すれ違う2」 すれ違いざまに動く。a/歩く人、b/動く人。a=動き出しのタイミングを探る。b=相手の動き出しを誘導する。        

4「振付を踊る」
与えられた振付から”エラー”を拾っていって、自分らしい動きのニュアンスを発見していく。

[問いかけ] 
なぜ動くのか?何を捉えて動き出すのか?今ここにある空間の中で、動くだけの理由(要素)をみつける。あーいまうごいた!っていう瞬間を作る。
踊るための手がかり:
①外側から与えられた動きを踊る。
②動くためのモチベーションを、内側から引き出していく。
③動きのルールやモチベーションを共有し、他者との関係の中から新たに動きが生まれるような仕掛けをつくる。


2013年11月4日(月・祝)13:00 – 16:00
2日目 付を踊る ・モノを媒介にして動く

初日は、あらかじめ用意してきた振付を踊るという、一方的な情報のやり取りで終わってしまったということから、2日目以降は、動くだけの「理由」や「動機付け」をもう少し相互的な関係から立ち上げたいと思い、100円ショップで様々なモノを探してきて、関係のための触媒にしようと考えた。問いかけたかったことは、視覚情報では掬い取れない感覚について、とりわけ「触覚」や「皮膚感覚」から環境を捉えなおしてみる可能性。

1・エピソードの交換
・見ることと触ることの違いについて。
(触ることが禁止されている現場で、作品を見ること。)        
・「美術館内の監視の仕事」の現場についてのエピソード。声をかけるタイミング=ラインをめっちゃ超えて、作品に接するぐらい近い場合。
・唾が飛ばない程度。喋ってたりガムかんでたりすると注意される

・劇場で踊ってる人には触れない。
・ピナ・バウシュの作品をドイツ(ハノーバーの万博)に観にいったとき。最前列の真ん中で観た経験。足のきゅきゅっていう音とか、大量のコインが落ちてきた出来事とか、見る関わりとは違う経験だった。
・ダンサーがハアハアしてたり、「意外と疲れているんだ」と気がつくと、そっちのほうがダンスに感じちゃったりする。
 
あらゆる出来事を(写真をみるときのような)二次元的な事実として、無自覚に追認していくと、視覚情報だけで世界のイメージを構築する事になるけれど、実際に起こっていることはそれとは少し違うんじゃないか?

前回の続き。主に2人組で、空気感を共有するようなイメージで動いてもらう。

2・「運ぶ」「触れる」
 たとえば床を速く擦るように触るのか、ゆっくり撫でるのかで、皮膚の下で反応する感覚受容器が違い、同じものを触る場合でも、前者は“つるつる”で、後者は“ざらざら”と、全く異なった印象を持つという。

・まずは2人組になり、お互いの肩にボールを当てて落とさないようにゆっくり運んでもらう。お互いに「接点」を共有して、ゆっくり動く。a地点からb地点までを目的を持って移動するというよりも、空間の中をウロウロしてもらうような感じ。

・それぞれのペアごとに、触るポイントを決めてもらい、一組づつ動いてもらう。
A組→顔と頭のてっぺん、B組→膝と膝、C組→腰と腰、D組→足の裏と膝の横。

・素材を変える。触るポイントも変えて、一組づつ動いてもらう。

A組→竹ひご→人差し指と人差し指。 B組→薄紙→背中と背中。
C組→両手と両手を合わせる。 D組→脇腹と二の腕。

3・問いかけ。
あいだにあるものに対して、注意力があるとその人の居方ががらっと変わる。そのモノの質感(硬さ・柔らかさ)、面積(小さな点か、大きな面か)などの情報を身体に写し取ることで、身体そのものの質感も変わる。

自分の身体に対しては、コントロールがきくポイント(手とか肩など)を選択するか、コントロールがききづらいポイント(背中の一部とか、膝など)を選択するかによって、動きの自由度や制約の範囲が決まる。

 他者との関わりについて。
接点を通して、自分が相手をどう動かすか。相手からどう動かされるか。相手の力が(モノを通して)自分の身体のなかにどういうふうに通って、どう入力して新たに動きを生み出していくのか。

 空間全体のなかでのあり方。 
二つの身体の間で、どのような「領域」が立ち上がるのか。二人でひとつの彫刻を作っているような感じ。


2013年11月10日(日)13:00 – 16:00
3日目 モノを媒介にして動く

全体的に進行が円滑に進みすぎないよう、引っ掛かりを作りながらじっくりと取り組みつつ、何かが生まれる瞬間を掬い取りたいと臨んだ日でした。決められたルールや枠組みを通って、そこを外れるあいまいな領域(グレーゾーン)を見つけ、自分なりに展開をつけてみる。動きながら考え、議論をして行くうちに、これらの方法が、最後には「自由に踊る」ためのツールになっていったのではないでしょうか。

1・フォルムを作る/器を作る/背中を作る/身体に眼をつける、というお話し。
たとえば、柔らかいもの(花)を持って立つ/歩くとき、同時にそれを見る眼が柔らかくなっていて、その情報を写し取る=触れる手と身体の質感も同時に柔らかく(花に)なっている。そんなことを以前舞踏の稽古をしていて教えられました。職人ならば、紙を扱っている人の身体はふわふわと軽くなっていて、鉄を扱う人の身体は重くてぎゅっとしているとか。日常のなかで触れているものによって身体が変化しているということだと思います。地域や環境、たとえば寒い地域に住んでいる人の身体、南国に住んでいる人の身体、というのがあって、それぞれ生まれてくるリズムやダンスが違う。今日のような天気で、少し湿った風が吹いてふんわりとした雰囲気の身体は、どういうものなんだろう?あるいは僕らの素材とは、いったい何だろう?

 前回は外にあるものとの関係で、初めて生まれてくるフォルムがあるということに気がつきました。物の質感と、物を動かす相手の力の方向などによって、身体が変化する。身体が全方向的にセンサーを張ると、普段意識しない背中もちゃんと使えている。空間の中で、立体的に身体を置いてみて、ある確かな形が生まれていることが重要で、それをダンスでは、「フォルムを作る」とか、「器を作る」、「背中を作る」、あるいは「身体に眼をつける」という言い方をしています。

やっていて感じたこと。見ていて感じたこと。
Kさん:相手の事を、呼吸まで感じないといけない。やっている本人どうしは思ってないけれど、(見ていて)場面によっては、たとえば「つぶしてやる」みたいな(覆いかぶさるような動き)ふうに見えた。やる側はそういうふうに見せるつもりはなくても、見る側からは違ってみえる。どんなふうに見せようかな、、。

Mさん:ふだんは閉じているけれど、聴いたり、発信したりする身体のオン/オフが明確にあるんだと思った。やっている時の眼とか。相手にも助けられていた。前回はけっこう長い時間やっていたので、どんどん開いてきて、空気が動いている。空間が動いていて、身体が動いていると、密度が出てくると感じた。

Nさん・自分が空間を動くだけではなく、止まっていてもエネルギーが流れている、循環していると動きとしてみえてくる。

・外側のエネルギーを使って動きを生み出すとき。3つのパターン。
 1 反動で動く。障害物(壁)にぶつかったときの反動を利用する。
 2 外側からの力の方向・強さを身体の中に吸収して動きに繋げていく。
 3 皮膚の表面にすこしづつ沁みこませて行く、浸透させていく。

鉄のような物質だったら、跳ね返す性質を持っているし、風や光のような要素だったら沁みこむような感覚になる。対象に応じて、身体の中の作業を変えていく

2・ストレッチ
背骨をなめらかに使えるようにする。頚椎と胸椎をつなぐ動き。捻る動きetc

3・ワーク① モノを使って、ポイントを作って動く。(2人組)

A組 竹ひご/おへその下。 B組 綿棒/手の甲。
C組 薄紙/頭のてっぺん。 D組 竹ひご/人差し指と足の親指。

4・ワーク② 
同じペア、同じ設定で、モノを取って、感触を記憶として残して動く。
→①でモノを落としてばかりでなかなかうまくいかなかったペアが、②では慎重に動く感覚が残っていて、とても緊張感があった。

問いかけ。
一次情報から二次情報へ。自分が直接体験したことを、自分でどう再現していくかという問題。
または再現したことを、第3者がどう再現していくか。再現の再現、コピーのコピーを作っていく。

5・ワーク③
 4人組。先程のペア(a.b.)に、同じ設定で動いてもらう。そこにもう2人(c.d.)が加わり、bの人の動きを真似、なぞってもらう。bの人の身体の中で起こっていることを写し取って動いてもらう。

6・フィードバック
Nさん:モノを取って記憶でやった時に、「竹ひごがみえない」と(中村に)言われたので、あらかじめ(手で)いじっておいた。ワーク③の時は、まねをする立場だったのだけど、まねをする対象の人の動きがどんどん変わるので、立ち位置がわからなくなってしまった。そのうち4人の距離が近くなって、お互いの皮膚感覚が感じられたとき、その時設定としての竹ひごは見えなかったんだけれど、4人がつながる“ひご”の感覚は見えた。 

Mさん:(時々ルールから外れる動き、変則的な動きをしたことについてなぜそれが出てきたのか、という中村の質問に応えて)ワーク②で2人でやっている時に、感覚が分からなくなって2人ともあやふやな感覚になった時があった。その時あやふやを明確に(もとあった状態に)戻すのか、あやふやをさらに遊ぶのか(という選択の余地が生まれた)。じゃあこう動こう、あやふやを楽しむ動きが生まれた。

Iさん:ワーク③で、まねをする人が、(相手の動きが)身体の運びとして、力の方向がどこに向かって行くのかが読めたら、単にまねではなく合理的に動きができると感じた。自分がやるときは、意識として指先から足の先まで行かなくて、合理的なふうには動けなかった。
まねをされる側になった時、まねをしている人がこちらを見ている動きをしているのを感じたけれど、それはどうなのか?って思った。

中村:何をまねるか?単に動きだけではなく、気配や雰囲気を真似るということもあるのではないか。その人の感覚(たとえば今頭が重そうだなーとか)をどのように情報として写し取るか。見る対象のフォーカスを変えて視野の中心ではなく周辺でぼんやりと捉えてみようとするとか、すこし変えてみるとそれが見えてきたりするのではないか。動きとして間違っていたとしても、そこからずれたとしても、その感覚を自分の身体に落とし込んでみて、“自分だったらこう動くな”という時間が始まってくればそので共振が起こってくるかもしれないし、そこからずれたとしても「同じ場に居る」ということは起こる。これをさらに発展させると、「それぞれバラバラな動きをしたとしても何かしら繋がって動いている」という状況が起こってきたら嬉しいし、そこを目指していきたい。

Iさん:それと関係しているかもしれないけれど、自分は人の動きを見る時、顔とか、腰とか、一部分だけ見ちゃうけれど、これ(このワーク)をやってると全体を見させられる。4人なら4人の、2人なら2人のからだ全部の動きを見ることが初めてできた気がして、あーぜんぶだーって。

中村:人をどう捉えるか、個として捉えることもできれば、「類型」として捉えることもできる。ダンスの場合、全体を作ってから個を作るやり方もある。ある照明家さんが言っていたんだけど、良いダンス作品を見ると、ダンサーの顔が印象に残っていると。


2013年11月17日(日)13:00 – 16:00   
4日目 真似をする ・即興で踊る

前回見えた要素を持ち帰り、思考をつなぐようにして毎回新たな提案を考えてきます。こちらの提案と、受講生達のテンションが良い感じで回っている時もあれば、なかなか両者の歯車が一致せずに滞ってしまう時もあります。
これまでペアや小さなグループで動いてきたことをいったん開いて、個々の表現の強さをふるいにかけるような、そんな試練の日になりました。
それぞれに持っている目的意識や資質を読み解き、「何を・どこまで渡すか」について自覚的に考えるようになったのも、この頃からでした。

1・お話し
来週は、外に出て、もっともっと遠くはなれた状況に身を置いてみて、何に注意を向けて、何に注意をそらすか、その選択を自分たちでしてもらおうとおもいます。感覚を延長させたなかで個の身体が見えてきたらいいな、と思います。それは、普段何に触れているんだろう、という問いかけでもあります。例えば光のもやもやしている状態があったとして、(実際に床に光が当たっている)その状態を身体に写し取って、どうやってこれを動かそうか、それをどう自分の中に入れるのか、表面の形をまねるのではなく、身体の中身に落とし込むにはどうするか、、。もう少し創造的に遊んでいきたい。
 触れるというのを、前回は身体の一部分で行いましたが、今回は全体で、ぼやーっとした全体で触れてみる。包まれている感じ。全体の中で共有される身体の受信・発信形態を探ってみたい。
2・ストレッチ
3・まねをする

今まで動いた記憶を元に、3人組み、もしくは4組みを作って動いてもらう。
三角形、もしくは四角形の配置に立ってもらい、先頭の人(a)は、自由に動く。残りの人(b,c,d)はその動きをまねする。aの人は、ひとしきり動いたらbにバトンタッチする。今度はbが先頭になり、自由に動く→他の人はそのまねをする。これを時計回りに繰り返していく。
 動きを先導する人は、他の人がついてこれるように、動きの速度や身体の向きをを調整しつつ、自分の身体があと3つあると思って、それらを連れて行くような感じで動いてもらう。
モノをなくした状態で、距離を取って、おたがい眼の周辺で相手の動きを捉えながら動く。
主体的に動きを引っ張ることと、他人に身体を預けるようにして動きを写し取っていくこと。動く人・真似る人の役割を入れ替えながら、全体でひとつの流れを生み出していく。

4・お話し
Sさん:普段と違う、ダンスっぽいテンション感。そのひとつの作り方なのかな、と思った。周りの空気感との関係。複数人居たらピッピッピッピーみたいな(つながる)感じのひとつの方法。たとえばケンカとかの雰囲気とか、、。

中村:「僕らには、何があいだにあるの?」っていう、その問いかけの繰り返し。そのあいだにどういう濃密さ、薄さが作れるのか?“触れている”という感覚を、どう捉えるか。近くの距離でしか伝わらないものを、どうしたら遠くの離れた人同士で伝えられるのか、そんな試みをしていくと、その人の「メディア性」が強くなっていく。距離があるから疎遠なのか?近いから密なのか?その逆の状況はどうしたら想定できるのか?集中点を何に持つのか、、、。

5・即興で踊る
次は、逆のアプローチで、真似をしない、できるだけ相手に影響されない、というアプローチ。
3人組、4人組、2人組など、メンバーを入れ替えながらどんどん即興で踊ってもらう。かけた言葉。・動きが出てくるまでじーっと待っていてもいいし、動き出す時は何かを捉えて動き出す。自分の中から何が出てくるか。頭が働いているようだったら、何か自分らしくないことをやってみるとか、思い切りをつけてあげる。あばれる。動きに落差をつける。激しく動く。自分というフレームから一歩出てみる。
きわとか、自分の限界をどこに設定してもいいけど、リミットをちょっと越えたところに、他者が見えてくる可能性、そういう瞬間が垣間見えてきたら、、。
あるもの全部出してみる。ないものも出してみる。とりあえず振り出してみる。思い切りを。忘れられない一日にしましょう。

・大胆さが分かれば、繊細さも分かる。自分が自分の身体で踊っているだけでなくて、「他人の身体を借りて踊っている」と思えば、いろんなことができるし、

やってるうちにだんだん抜けていく。自分という表面を一皮剥くと、ちがう表情が見えてくる。


2013年11月24日(日)13:00 – 16:00 
5日目 散歩をする

これまで「感覚」を「動き」につなげながら、情報の受信/発信のパターンや方法を共有してきました。今回は、スタジオを出て、ブランクラスの裏山(清水ヶ丘公園)を皆で巡り歩きました。起伏に富んだ地形とともに移り変わる眺望、目的をもたずに歩くことで出会う人や風景、歴史的な遺構を土地に刻まれた眼の記憶として体験するなどなど、さまざまな対象を身体に写し取り、印象として持ち帰る経験でした。

映像には、秋晴れの一日の終わりに、テーブルを囲んでそれぞれが持ち帰った「印象」を話し合い、“見えたもの/見なかったもの”について、パズルを組み合わせるようにして話し合い再現していく部分が映し出されています。風景のなかに居ること。少し離れた地点から同じ風景を再現すること。両者を行ったり来たりしながら、起こったことも起こらなかったことも含め、体験の厚みを作っていくのだと思いました。最後に、大野一雄氏によるテクスト「森の散策」を皆で読んで終わりました。

 1 お話し
 2 アップ
 3 散歩/清水ヶ丘公園
 4 散歩/大原随道(トンネル)
 5 散歩/高架下の公園
 6 散歩/並んで歩く/井土ヶ谷事件の跡
 7 エピソードの交換。見たものを話し合う。
 8 テクストを読む
 9 発表についての話し合い。

それぞれのエピソード。
トンネルの中の狭い道を自転車がすれ違う感覚。
野球をやっている子供の感じ。フェンスの上を鳩が歩く感じ。どんぐりを餌にして鳩に食べさせている。滑り台とブランコの感覚の違い。草が茫々に生えた場所の感覚etc


2013年12月1日(日)13:00 – 16:00
6日目
 創作①野外にあるものから要素をピックアップして、それぞれ動きを作ってみる

11月が体験編だとすれば、12月は創作編です。体験を共有して、それぞれどんなアウトプットをするか。全体の意識を発信型に切り替えようと考えました。今回は、公園での体験をもとに動きを創る作業をしています。ひとりひとりから発せられる息遣いや肌感覚、リズムや間合いは、実に様々です。「創作の時間→整理してまとまった動きをする→他者と息遣いを共有しながら動く」に至るなかで、“個別に発せられた動きや感覚が、どうやって全体と重なっていくのか/重ならないのか”という点が問題として浮き彫りになります。
6では、動きのモチーフについてひとりづつ話しをしてもらいましたが、ピックアップしたモチーフやそれを語る切り口が、はからずもその人の心理状況を映し出しています。モチーフとして選択した風景に心情を託すことはまるで歌を詠む行為のようではありますが、一方これまでけっして個人の内面的な領域に踏み込まず、パブリックな場に自らを連れ出していくこのワークショップのやり方は、暗に自分自身と向き合うことを要求しているようです。自らと対峙し、
どうパブリックに開いていくか。他者と切り口を合わせながら、どう自分の輪郭を作っていくか。倣うべきモデルも答えもないような問いが続きます

1・お話し。今月の目標。何でもいいから、それを動きに変換していく訓練をする。重く考えることはなくて、俳句みたいに当意即妙的に、ぱっと見てさらさら、と切り取っていく。また、表面的な動きをなぞるだけではなくて、その時の感覚をどうやって再現するか?を考えていきましょう。

2・ストレッチ。「関節のフォーカス」を変る。

3・創作。動きながら考え、出てきた動きと対話する時間。アイデアと動きを近づけていく、それぞれの作業。(形にしてしまう前の過程の状態や、どうなるかわからない生き生きとした身体の状態が見られます。)

4・とりあえず全員で、動いてみる。全員がばらばらに違う動きをしている状況。

5・整理して、もう一度全員で動いてみる。動きに雑味やノイズがなくなっていく印象。

6・確認する。3人ひと組で動く+なにをモチーフに取ったのか、ヒアリング。動きの元ネタが何であるのか、それをどう変換したのかを確認しあう。

Nさん:私は北辰(長野北部)の出身で、リンゴは良く見てるんだけど、(横浜に来て)蜜柑をみて大興奮。それと駅のところに居る鳩のラブラブな感じがいい
なと思って、蜜柑の丸い形状から鳩の形態に変わっていくさまをやってみました。

Sさん:公園で見た、ピッチャーの投球フォーム。待ちの姿勢と動く時の姿勢がかっこいいので、その様子。

Mさん:老犬が散歩されているところ。首輪がリードで飼い主の手とつながっていて、飼い主を頼って、飼い主が居るから自分が成立していて、自分の世界が広
がってるんですけど、老犬だし、もうすぐ壊れちゃうのかなっていうので(老犬の立場から)倒れたり起き上がったりしてました。

Iさん:知らない町で迷って、(というのをやろうとしたんだけど、)やればやるほど私は何をしたいのか、どこに行きたいのか分からなくなって、集中が切れ
たというか、頭がいっぱいになっちゃって、、、。

Kさん:野球を見たときの控えの選手、ベンチに座ってるだけなのかなと思いきや、案外ヒットを打ったら周りが喜んで、自分も喜んでいて、ファールボールがきたら自分が拾いに行かなきゃいけない、決められていることやらなきゃいけないことがあって、それ以外のところだけは自由に自分の好きなように振舞えるみたいなこともあるのかな。

Aさん:滑り台の坂道で男の子が滑ってた様子を足でやっているのと、街頭にぶら下がって立ってる状態を表現している。小さい石だけ(のエリア)で立つ。ピッチャーが盗塁を防ぐために振り返る動き。

Tさん:ものに与えた力が限界に来たときに、向こう(そのもの)がどうかなってしまう瞬間の反応みたいなの。ドングリとか固いものを思いきり割る時に力を
入れて殻が割れたり、(ドングリの)身の方がしなるけどグーって力を加えられて耐えられなくなってバリっていう感じ。あと、ボールを投げるときの勢いと力に、ボールが耐えられなくなってはずすつもりなかったんだけどすっぽ抜ける瞬間。

中村の実演とお話
モチーフ:木に登ったときの動きと感覚。道に迷ったときに振り返る仕草。ふたつのモチーフを交互に入れて全体にアクセントを付ける。
それを見たNさんのお話し。
「最初のうちはパフォーマンス的に動いていて、パフォーマンスしているときは自我が消えているような状態にみえるんだけど、何かの瞬間に自我がふって入って、あ、人に戻ったみたいな瞬間 があったりして、自分はそれをやりたかったんだけど最初に、むつかしくってできなかった。切りかわりとかうまくいかなくってそれだったらずっとパフォーマンスしたら楽なんだけど、だけどそこに人間(っぽい表情)がたまに突然入ってきたりとか、コトバ言ったりしたかったんだけど、できなかった。入らなかった。余地がなかった。というか自分に余裕がなかった。」

中村:まずは実感したことをやる。「実感」を、今ここに作り出す作業。集中してひとつのモチーフに取り組んで、まずはそこを突破する。そこから先に見えてくるものがあれば、遊びの余地も生まれてくる。(ひとつのモチーフに集中したり没頭したり専念する先に、ふと客観的になる状態が訪れる。)7人いれば7通りの動きの変換があって、それを僕らはお互いに(確認しあうことで)勉強できる。いろんなものを踊りにかえてしまおうという意思、欲を持ってみる。すぐにシーンにならなくてもよいので、そういうものを種として持っておきましょう。

7・ひとりひとり、自分の作ったモチーフを踊り、リレー形式で渡していく。順番は決めずに、自分が動きに入るタイミング/動きを終えるタイミングを感覚的に選択していく。
「いろんなことを経験していったほうが判断基準ができる。自分の踊りをどう作るか、ということをこれから考えていきましょう」


2013年12月8日(日)13:00 – 16:00
7日目 創作②「今、ここにあるもの」をフロッタージュで写しとり、摩擦の感覚と体験を動きに変換してみる。

2つめのモチーフを創作しています。 公園という広い敷地からモチーフを探してくるという前回のテーマから一転して、今回は身の回りにあるものとの関わりを 探ろうと考えました。
ブランクラスの空間(壁や床やいろいろなところ)に薄紙をあてて、鉛筆で紙の上を擦ると思わぬ形が浮かび上がってきます。 壁の罅、床の溝、棚に並んでいる本の背表紙、トイレのタイル、自分の足の裏、テーブルに置いてあったみかんの小さなデコボコ、、、。 「触れる、という見かた」をすると、私たちの身体と地続きになっているモノたちが、意外にも豊かな感触を呼び起こし、細かい起伏に富みながら 楽しい模様を描いているのを発見しました。 また、それぞれの触れ方・見方・場所に対するアプローチを視覚的に確認しあい、今度は摩擦の際に起こる手の感触を、身体の表面に移し替え、 動きにしてもらいました。平面で起こっていたことを、その感触を取り出して立体的な空間に移し替える試みであります。  今・ここにあるものとの関係を、具体的な行為や感触を通して作ってみること。動きや振付の完成形を作るというよりは、常に生成状態であるような、 そんな動きが生まれてきました。              

1・ストレッチ

2・導入。創作=体験したことを、別の領域に移して再現する。 (中村が、あらかじめ家の中にあったものを写し取ってきて、その経験を話す。) 硝子の模様とか、柱のデコボコとかを写し取っていたら、長い間同じ家に住んでいながら、こんな形をしていたんだ、 ということに気がついた。それでは普段何を見ていたのか?視覚的な経験に頼って何気なく生活していると、 何十年か後に建物が壊されて、自分が住んでいた家の記憶を聞かれても、うまく思い出せるかわからない。 (親しい人の顔はどうだろう、、?と考えると、少し怖くなる。) ガサガサ感とかデコボコ感を通して「触らないと見えない」ものが確かにあって、こんなことをしなければ見えなかったもの=無意識に身体化していた空間を、視覚的に切り取ってみる経験をする。 見るものを触れるものに変える。感触の経験をつくる。さらに、その経験をどう再現するか?

3・フロッタージュ

4・出来上がったものを、みんなで見てみる。ひとりひとりに話をしてもらい、写し取った「絵」と実際の場所を比べ、みんなで 確認してみる。また、「楽しかった感触」を聞いてみる。さらに他者の「絵」を見て、どれが好きか、なぜ好きなのかを話してもらう。

5・動きに変換する。 問いかけ:今の経験を、どうやって空間に焼き付ける(プリントする)か?またどうやったら、それが見ている人の眼に映るのか? 人がそこに居た像を、空間に焼き付けたい。

6・全員でいっせいにやってみる。(2回ほど。)それぞれの立ち位置は中村が決める。動きの選択や間の取り方は、自由。 それぞれ自分が作った動きのなかで、時間性、空間性、質感、を自由に変化させてみる。また、周りの動きと自分の動きを 調和させたり、アクセントをつけてみたりする。自分の立っている位置を中心にして、波紋を描くように、自分が発した動きが周りに 伝わっていって、フィードバックされた”響き”を感じて新たに動きを出していくような、そんなイメージ。

7・他者との影響関係を作る。3人に分けて。一人基準になる人を決めて、あとの二人は立ち位置や距離感を自由に選択してもらう。 相手の動きに応じて、直接動きでこたえられる余地も残しつつ、「周囲の出来事に開いた身体の状態」、「何が起こっても対応できる身体の状態」 を作っていく。


2013年12月15日(日)13:00 – 16:00   
8日目 身体の重さについて。重心をテーマに動く。

12月に入って、動きの要素が2つ出揃いました。

今回は個々で創作した2つのモチーフを、“どうやって他の人と動きをつなぎ合わせ、一連の時間を作っていくか”について考えています。

さらに、3つ目の動き要素「重心」についてみんなでアプローチしています。身体の重さを支えるポイントを1点~4点に限定し、それぞれ自由に動いてもらいました。全体的に和やかな雰囲気のなか、創造的な良いエネルギーが生まれていました。懇親会をやろう、という話しがでてきたり、西田さんがクリスマスプレゼントを皆に配ったりと、ワークショップの内容だけでは足りない「何か」を共有しようという雰囲気が高まってきています。

1・雑談。子供のワークショップをやった時の話し。子供がつく分かりやすい嘘についてのエピソード。高校生にワークショップをやった時の話し。
その他、集団内での上下関係や、それをもとにした規律から生じる(不自然な)仕草や話し方について。体験したこと、思ったこと、感じたことなどを自由に話す。

2・ストレッチ~重心ワーク①
導入①
・片足1点で立ってみる。骨盤の位置、胸郭の位置、頭の位置、それぞれの位置を動かして微妙に調節しながら、足の裏に全体重が乗っかり、バランスをとっている状態を感じてみる。
・座った状態(長座)で左右のどちらかの坐骨を床につけ、全体重を乗せられる一点を探してみる→その一点に乗れたら、四肢を自由に動かしてみて、バランス(重さと軸)を確かめてみる。

導入②4点~1点まで。
・4点で重心を支えること→自動車、机など、物を支える点として最も安定感がある。床に関節(手・肘・膝・肩・頭etc)を置いて、4点で組み合わせてみる。それぞれの点に身体の重さを配分し、安定感(不安定感)を体験してみる。 空間に彫刻的なフォルムを作るようにして、形そのものにリズム感をもたせたり、緊張感をもたせたりしながらやってみる。
・3点で重心を支える。3→不安定だけど魅力のある数。同じように、どんなフォルムが生まれるかをそれぞれ追求してもらう。
・2点で重心を支える。
基本形は2つの足で立っている形。そのなかでも、足の裏のどこに重心を置くかによって、全身のバランス感覚が変わる。さらに、足と手、膝と肘など、別々の関節を組み合わせながら2点で身体を支えてみる。
・1点で重心を支える。
片足。もしくは左右の坐骨のどちらか。左右の膝のどちらか、など。片足に乗っている場合、足の裏に乗っている面積を小さくしてみる。骨盤、胸郭、頭部の位置をどう変化させていくかで、ダイナミックなフォルムが生まれる。

3・重心ワーク②
[重心=その場で動く垂直軸に、移動という水平軸が加えるとどうなるか]
・1点~4点の重心を即興的に組み合わせながら、2人一組で1ラインをまっすぐに進む。
・役割を分ける。
a=ゆっくり歩くだけ。b=重心を組み合わせ、姿勢を変えながら移動。
aの人は砂時計のように時間を作る人。抽象。安定感。
bの人はaの時間軸に沿って自由に動きを組み合わせる。(自由に間を作りながら動く。)

4・シーン作り。
個々で作った動きを、全体でつなげてみる。「最初に立つ位置」と「出はけのタイミング」をおおまかに決めておいて、動きそのものについてはこちらから指示せずに、個々の感覚に委ねてみた。
主な問いかけは、「動きが生まれた現場(ブランクラスの裏山・ブランクラスの中の空間)とそこから抽出された感覚が、それぞれの動きを通して、“今・ここ”
にどう再現されてくるのか」ということ。問いかけは以下3つの要素に開くことができる。
・ひとつの体験が、時間と場所を変えて再構成されたときに、体験そのものにとってどのような変化が起こるのか。(変換の方法)
・全員で同じ体験をして、個々の知覚のフィルターを通して動きを創作し、ふたたび全体として組み合わせられた時に、どんな空間が立ち上がるのか。
(集合と個別化の方法)
・最終的に他者と動きを共有したときに、どんなやりとりのパターンが生じるか。(共有の方法)
 現場では、形を変えながら何度かシーンを繰り返すうちに、決まった動きから逸脱して、即興的な動きが見えてきた。
他者の動きの呼吸や気配を読み込み、写し取って、自分の動きとどう重ねるか。どうやってお互いに受け渡し、全体にエネルギーを流していくか。次回も考え
たいと思った。


2013年12月22日(日)13:00 – 16:00
9日目 創作③ 重心をモチーフに作成してきた”楽譜”を元に、それぞれ動きを作ってみる。

前回、重心をテーマにして即興的に動いてもらったところ、全体的にとても良いエネルギーを生み出すことができました。動きや思考を状況に合わせてフィットさせていく能力の高さに、感心させられました。そこで今回は、もう一段階進んだことをやってもらおうと考えました。床の上に置く身体の重心の数を1点~4点に限定し、時間軸に沿ってそれをランダムに配置したダイヤグラムのような「楽譜」をあらかじめ用意し、それを元に動きを作ってもらおうと思ったのです。
 その場その場で生まれる活き活きとした動きを分解して、「数」や「拍」を元に姿勢を作り、あらためてひとつひとつのポーズを動きの流れとして再構成してもらうという作業をしています。感覚(こう動きたい)と思考(楽譜というシステム)と実際の動きを、どう切断し、繋ぎなおすのか、、、。
スムーズに創作できた人もいれば、相当な苦労を強いてしまった人もいます。
 既に年末の雰囲気のなか、終了後は井土ヶ谷の居酒屋にて懇親会が開かれました。
1・ストレッチ はじめ
2・楽譜について、導入
シミュレーション①
○1点で重心を取る/2点で重心を取る/3点で重心を取る/4点で重心を取る。
・「なんかこれ面白そうだな」というポジションを探す。
・自分が経験したことのない重心の置き方を探ってみる(たとえば手のひらを床につくかわりに、手の甲を使ってみるとか)。
・必ずしもきつい体勢でなくても良い。
・2点/3点/4点の場合→重心の配分を考える。
(たとえば2点の場合、1点ともうひとつの点の重心の割合が50%-50%なのか、98%-2%なのか。)
シミュレーション②
○流れを作ってみる。「4→2→3→1」
 4点→2点→3点→1点の順で重心移動をして、体勢を変えてもらう。
それぞれ自分なりに動きを作り、自由に組み合わせてもらう。
○グループ分けをする。
4拍子のグループ(4人1組)と3拍子のグループ(3人1組)に分け、それぞれ違う楽譜を配布。
・“重さ”の質について。床と重さの関係を考える。自分の重さが、どの程度まで床の下に届いているのか?床の下30cmなのか、3mなのか。どこまでも地中深く重さをかけていくのか、あるいは一枚の羽が乗っているようにして、身体を横たえてあげるのか。
・ひとつのpostureから、空間にどういう軌跡を描いて次のpostureにいくのか。
・身体の中を走る力の矢印(ベクトル)が2つ以上あると、立体物として魅力的になる。
3・ひたすら創作の時間。
個々で創作 できたところまで、通してみる ふたたび各自、創作の時間 最初から通してみる。
フォーメーションを変えたりしながら、まずは個々で創作し、グループごとに実践してみる。
4・シーン作り(フロッタージュ+お散歩)前回の続き。
全員揃った状態で再び試してみる。
それぞれ創作したモチーフを動いてもらいながら、臨機応変に出はけのタイミングを取ってもらう。
空間にはつねに3人~4人が動いている状態を保ちつつ、相手の動きや呼吸を見ながら身体の向きや距離感、間の取り方を調節してもらう。

ダイアグラム

床の上に立つ。身を横たえる。反動を受けて動きの流れを生み出す。自らの身体の重さを知り、バランスをコントロールしながら床との関係を作ることは、それだけで踊るための重要なテーマとなる。
 まずは導入として、「身体の重さをどこで支えることができるか」、「何点で支えることができるか」みんなで試してみた。立っているときは左右の足2点。片足で立つときは1点。両手両足で体重支えるときは4点。両手片足、片手両足の場合は3点。それぞれの足、それぞれの手に重さをかける割合を変えれば身体の中を流れる力線も変わるため、異なった経験ができるだろう。
また左右の膝や肘、おしり(坐骨)、頭など、関節の大きな部分を使って重心を支えることで、フォルムを複雑に組み合わせることもできる。
 今回、「重さ」という垂直軸に時間的な水平軸を加えるべく、ダイヤグラムを作成してみた。ひとつの楽譜をみんなで共有することで、個別で主観的な感覚を小さなユニット(音程も音域も違う楽器=身体の集合体)として、相互に繋いでみる試みとなった。

<読み方>
まずは図を楽譜のように、左から右に見ていく。
・左端、a,b,c,dに、それぞれ4人のダンサーを割り当てる。
・メトロノームを用意し、□を1拍とする。一列目は4つの□が4ブロック、これを一つのフレーズとする。
・□の下に書かれている数字が重心の数であり、4人のダンサーが4Å~4拍子のあいだに重心を4点から3点、次のフレーズで3点から1点、次のフレーズで1点から2点へと移動していくことになる。
2列目、3列目では拍数がより細かく分割されているため、動きは速くなり、4人が空間に構成するリズムもより複雑になる。ダンサーはダイヤグラムに沿って繰り返し練習することで動きの流れを作り、より自然でなめらかな動きが出てくるように、楽譜を修正してもらった。


2013年12月23日(月・祝)13:00 – 16:00
10日目 立つこと。揺さぶりをかけること。

前回までやってきたテーマ「重心」に加えて、今回は4つめのテーマに取り掛かっています。
4つめのテーマは、ひとりひとりに、あらかじめ言葉に書いてメモのようなものを渡しました。
たとえば「反復の動き」というテーマを渡した人もいれば、「一本のライン」「皮膚感覚」など。
これまで接してきたなかで、それぞれこんな感覚を深めてはどうか、という講師からの提案と、最後にはひとりで考え、応えを出すことに挑戦して欲しいというメッセージもありました。
今回はその導入として、「人前に立つ」ということはどういうことかについて、みんなで取り組んでいます。ひとりで視線を引き受けて立つ際に生じる、“私という軸の持ち方と揺れのありよう”を、みんなで見つめていこう、というものです。視線の奥にあるものや身体のライン、空間の前後左右に対する意識など、それぞれの居方・向き合い方は、個人のバックグラウンドを映し出すとともに、社会との関わりを作り出してもいます。すでに書き込まれている「個」の痕跡に自覚的になり、そんな自分自身のあり方に少し揺さぶりをかけて、受け入れていくこと。そこを今回の創作のスタート地点にしてみました。

1・ストレッチ

2・重心について。
前回作った動きを、楽譜から少し自由になり、体感的な呼吸やリズムに落とし込んでいく業。トータルとしてみて、動きのつながりを意識してみる。
[問いかけ]
・ほんのちょっとした重心の傾きの違いに、どれだけリアリティを感じることができるか。
・動き出しと動きの終わりをカットイン/カットアウトするのか、フェードイン/フェードアウトするのか?
・動きの軸を固定する。床と身体の一部の接点のうちの、ひとつを軸にとる。どこを軸にして動きを展開していくのかを意識する。
・全体の動きのなかでメリハリがつくように、たとえば落下する動きがあるとしたら、その前の動きは少し軽い質感にしておくなど、前後関係をつくる。
・同じように、きわどい姿勢のポーズを取るときには、前後に安定感のある動きを入れるとメリハリがつく。
・「きわどさ」を狙わなくても、同じ姿勢でも身体の向きを変えてあげるだけで動きは出る。

3・ヒアリング
ひとりひとりの動きを見せてもらい、ヒアリングをしながら動きの意図を明確にしていく。
・スタンスを狭める(コンパクトに動く)。
・動きの過程も形のうち。瞬間瞬間も形になっているかどうか。
・態。切り口を見せるということ。
・激しさと強さの違いはなにか。激しい動きで静けさを表すことはできるか。反対に、抑えた動きで激しさを表すことはできるか。

4・立つこと、揺さぶりをかけること
客席を作り、視線を送ってもらう。そのなかをひとりで前に出てきて、正面を向いて立ってもらう。
・社会的に立つこともできるし、反社会的に立つこともできる。自分のなかで、パブリックな自分とイレギュラーな自分が相俟って、こうやって、ここに居る。
・花を活けるように、自分という切り口をどう提示するか。
同じ状況で、ひとりで出てきて、自分に揺さぶりをかけてみる。どんなことをしても良い。
・自分が知らない動きを、どんどん出していく。自分のなかに中心を持たない
・自分がやったことが自分にかえってくるとしたら、その行為の反響が、お客さんの反応とともに、どう自分にかえってくるのか、どのように受け止めて、また反響を作り出していくのか、ということが大事。
・ただ出てきて、アイアムヒアって言えちゃう状況はなかなかつくれなくて、なんか普段自分がやらなさそうなことをやってみて、揺さぶりをかけてみて、かえってきたリアクションを通して初めて「自分がここに居る」っていう状況が生まれてくるんじゃないか。
・ある行為を選択したらそれを否定する。その状態をまた否定する。ここにも居れないしここでもない、という状況を作っていく。否定形で時間を送る。精神のダイナミズム。
・最終的にその人がその人自身で居ること。その状態が人前で成り立つことができるかどうか。

5・シーン作り(フロッタージュ~お散歩)


2014年1月12日(日)13:00 – 16:00
11日目 創作④ それぞれに言葉でモチーフを渡し、動きを作ってみる。

新年最初のワークショップです。前回導入した、言葉のモチーフをもとにして具体的に創作する時間になりました。 創作形態としては、それぞれ与えられたモチーフを、 自分なりに追求してもらう形になっています。 ワークショップも残りわずかとなったところで、この先もその人が”自分の動きだ”と思えるものを発見していくために、何かしらの手がかりを与えることができれば、という思いもありました。
モチーフを出し、新たに提案を掘り下げ、対話をしながら動きの輪郭を一緒に作っていくという機会になりました。
1・はじめ お話・ストレッチ
2・モチーフ紹介
これまで個々の動きを見ていて、こういう動きが得意なのではないか、という観点からの提案もあれば、 ひとまずの手がかりとして、どのように解釈してもよいような含みをもたせてもいます。そのなかから少しでも 肯定できる要素を拾い上げてくれれば、という感じで渡しました。
「反復の動き」「反復の動き」「一本のライン」「ここに居ること」
「弱さ、について」「あるく」「皮膚感覚」
具体化していく作業で付け足したイメージ。
Kさん:一点で動く。運動的な感じ。小さい動きから始まり、回る、跳ぶ、床に手をつく、身体の一部を触るなど、 モチーフをつなげて動きのシークエンスを作ってもらう。ひとまとまりの動きを作ったら、それを反復する。繰り返していくうちに、 身体に呼吸が通っていって、質が変わってくるようなイメージ。
Iさん:楕円形の導線を作る。まずは楕円形に歩く。歩いている軌道上に、ちょっとした動きが発生する感じ。 正座をする、とか振り向くとか、時々ダイナミックな動きが起こるとか。何周も繰り返して動く。具体的な動きについては、 自分のアイデアを重視する。
Nさん:抽象的な一本の線、ではなく、具体的な対象を描いてほしい。そのイメージを一心に追いかける、という意味で 一本のラインを辿る動きを作ってもらう。モチーフは植物、葉っぱ、花とか、自分が込められるもののほうがいい。
向原さん:ゆっくり斜めに歩く。頭の高さを変えず、後姿を見せながら、静かな感じで。 歩きながら、さっきまでそこに居た自分の姿と、今ある自分の位置を感じる。足元に水が流れているイメージで、足元に抵抗感を 感じながら歩く。時々足を取られてバランスを崩す。
Sさん:意図に反する動きをする。思わず身体の一部が動いてしまうような感じ。ちょっとした違和感をつくるところから始まって、 動いてしまう身体と、それを追いかける意識と駆け引きをしてもらう。
Aさん:空間を右から左へ、左から右へと、往復して歩く。(ごく普通の速さで。)歩いていくうちに、軌道がゆがんでいくような感じ。 見ている人の視線をなぞるように、自分の身体が筆先のようになって、細い線を描いたり太い線を描いたりする。突発的に激しい動きを 入れる。見ている人の視線を誘導するように動いてもらう。

3・それぞれ、できたところまで見せてもらう。

4・重心のシーン、構成。今までのグループをいったんバラバラにして、おもにペアで構成してみる。人が入れ替わりながら、時々ソロの シーンを挟み込み、個々の動きが受け渡され、有機的につながっていくようなイメージ。身体の向きはそれぞれで、具体的な関係が見えすぎない 程度の関わり方を探る。いっぽうで、相手に対する影響力を一定に保ったまま、お互いに打ち消しあわないように距離感を設定する。


2014年1月13日(月・祝)13:00 – 16:00
12日目 創作と構成。

「個々で創作+皆で合わせてみる」の繰り返しです。出てきた動きを元にして、さらに細かいイメージやニュアンスを付け足していきます。
それぞれのモチーフを発展させて全体であわせてみた時、どのような響き合いが生まれるか、どのようなイメージが現れるのかを見極めようとしています。個々の感覚レベルで起こっていることが、空間にどのような図柄を描き、観ている人とどんな相互作用を生み出しうるのかを探っています。
 全員で絵のようなものを共有して動くというよりは、個々の感覚の内側から「風景」をたちあげようとする試みとなりました。

1・お話し
2・ストレッチ
3・言葉のモチーフから キーワード

毛穴を開く。動きの前後で色が変わる。壁に溶け込む。
空間を横切る自分の身体がペンなのか毛筆なのか、質感を変えてみる。
物理的な現象を身体でやってみる。身体の一点に支点をつくる。支点が逃げる→それを手で追いかける。逃げる支点(対象)と追いかける手(主体)それを自覚する意識、ひとつの身体を3つの運動に分ける。

4・全体で合わせてみる
構成。ひとりひとりきっかけを決めて順番に出てくる。

5・全体で合わせてみる②

6・構成+反復的に練習。重心シーン
作ったフォルムに、どうしたら実感を流し込んでいけるか。生き生きしたものにしていけるか。


2014年1月19日(日)13:00 – 16:00 
13日目 創作と構成。衣装のことなど。

1月に取り組んでいたシーン(言葉のモチーフ)が完成しました。 発表に向けて、すべてのシーンが出揃ったことになります。今回は完成したシーンどうしをつなげる作業をしています。個々の動きのモチベーションを失わないまま、どうすれば自然なシーン展開が生み出せるか、みんなでアイデアを出しあいました。後半は衣装を持ち寄って楽しく着せかえしたりしています。

1・はじめ~ ストレッチ
2・「言葉」のモチーフ、個々の創作
3・みんなで合わせてみる。
4・メトロノームのシーン。
5・衣装を着て動いてみる。


2014年1月26日(日)13:00 – 16:00 
14日目 通し稽古

発表前の最後のワークショップになりました。客席を組んだ状態で、通し稽古を目標にして進めていきます。まずはシーンとシーンの間がスムーズにつながるように、新たに小さなシーンを足したり、それぞれのきっかけを整理したりしています。
それから初めての通し稽古に移ります。全体を通して動いてみることで、「流れのなかで、自分の立ち位置を掴んでみよう」というのが焦点になりました。大まかな動きや展開は決まっていたとしても、そのなかで自分が動くだけのモチベーションをどう作っていくか、、みんなで考えていきました。3か月のワークショップを終えようとしている今、心地よい緊張感が漲り、みんなの立ち方がきれいになっているな、と感じました。
本番までに、実際にはあと数回、リハーサルをしています。この日の通し稽古は初回ということもあり、特に後半部分がまだまだ手探り状態です。
それでも、3カ月を同じ空間で過ごしてきたことが良く反映されているな―と感じました。
感覚、記憶、思考、再現、距離、対話など、自己と他者をめぐるたくさんの問いかけが提示されています。
今回の通し稽古は、集団で織り込まれた、長い長い日記を読んでいるような、そんな出来事であり、体験でした。


2014年2月1日(土)発表
ダンス | 中村達哉 ダンスワークショップ ショーイング [かかわりをおどる]


8名の受講生と共に、「かかわり」というキーワードを軸に、3ヵ月をかけて動くための方法やアプローチを探ってきました。これまで「かかわり」をキーワードにして、3ヵ月間のワークショップを行ってきました。ワークショップの中では、ダンスという問題の核を見つめつつ、一方で決してひとつのジャンル意識に自足しない、自由で冒険的な展開方法を探ってきました。今回ショーイングをするにあたって、主に以下のアプローチを元にシーンを展開していきます。
・ここに居る、ということ。
・風景を踊ること。
・身体の重さについて。
ブランクラスのなかをみんなでうろうろしたり、外を散歩して要素を抽出しながら、まるで句か歌を詠むようにして、出会った事象をそれぞれダンスに変換してもらいました。 そうして現れた2~3分のシークエンスを次々と踊る身体は、うねくったり掠れたりする歌の文字か、文字の書かれた短冊のようでもあります。出演者ひとり

ひとりの身体がなにを喋り、お互いがどう呼び交わしあうか、「この場でしか起こりえない」ダンスや空間が生まれたら、幸いに存じます。(中村達哉)

出演:稲村香菜/関川航平/栗原千亜紀/向原 徹/西田かほり/立川真代/木村元郁

日程:2014年2月1日(土)
開場:18:00 開演:19:30
入場料:1,200円

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