2017年のLive Artはキャッツヘブン企画「ヤミ市」でスタートする。

今年の新年パーティーの企画を吉田和貴さんにお願いしたところ、cat’s heaven…!というプロジェクトの展開として企画をしたいとのこと。cat’s heaven…!とは、2005年に8月15日の敗戦記念日を念頭に置いたグループ展のために立ち上がったプロジェクト。第二次世界大戦終結の日を考えるときの「犬死について考える(thinking about dog’s death)」という姿勢に対峙して、吉田さんの周辺にいたアーティストたちが「猫たちの幸福(cat’s heaven)」を想うことをあえて標榜したことから、この名前が当てられたということらしい。

cat’s heaven…!が逆転して示そうとしたは、ひとつの事柄の認識を、ひとつの方向に固定化させたくないという意思の表れだろう。批判というと、ネガティブ方向に傾きがちだけれど、ポジティブ方向への批判だって怠ってはいけない。それこそ現状を誤解してしまう恐れがあるからだ。実際、問題だらけの世の中だけれど、クリアしていることだってたくさんあるはずで、そこを無視したら、結局のところ過去を振り返るだけで、同じところをグルグル回ってしまうことになる。

そしてそのcat’s heaven…! の今回の提案が「ヤミ市」というわけ。

一瞬、政治や経済が空白になった時代に、無法と言わず自由の名の下に、そこらじゅうで市が立った。善も悪も一時休戦、商魂たくましく、すいとん汁やら饅頭やら、果てはカフェまでが現れて、食い気を糧に生き抜く様は、ものの本やら映画やらで聞き知るばかりだけれど、きっとヤクザなことが吹き荒れたのだろう。それでも、そこにあったであろう熱のようなものを想像して、憧れてしまう気持ちはよくわかる。

その時代、なにも官僚たちだけが夏を謳歌したわけでもなく、「ヤミ市」に限らず、多くの人々が自分たちで足りないものを補うことから、多くの発明が実践されていったはず。

今の時代は、ともすると、既存の方法やシステムに知らず知らずに乗って考えをめぐらしてしまいがちになる。やってはいけないことばかりだし、なにかしようとすると、お金ばかりがかかって二進も三進もいかない…。本当にそうだろうか? 既存の美意識やクオリティーと少しだけ距離を置いて考え直せば、自分たちでいろいろとデザインしていけるのではないだろうか?

大半の飼い猫は、明日からでも野生に帰れるたくましくて珍しい生き物。そんな猫たちを見習って、あらためてDIYしていこうと思う。まあ、とりあえず今年は、持ち寄りで売り買いを楽しむところから始めよう。

小林晴夫(2017.1チラシ掲載)


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